グレーゾーンの子どものための学習支援教室 学びのいろは

通常のクラスでうまく適応できない発達障がい、軽度知的障がい、不登校の小中学生を対象とした学習塾 : 浜松

退路を断って挑んだ大平台高校(定) 軽度知的障がいI君の挑戦

 

 

 

I君が入塾したのが、中3の2学期でした。

通常であれば、これだけギリギリの時期になると

入塾自体をご遠慮してもらうということもありえました

が、事情を伺ってみて、例外的に受け入れを決めました。

 

それは、1学期の段階で、I君自身が特別支援学校高等部

には行きたくないと自分で断ったというのでした。

そして、建築科のある通信制・サポート校を受験したい

と希望しているというのです。

 

なぜ特別支援学校に行きたくなかったのか?

I君は小学校の時から地域クラブでサッカーを続けて

きました。

 

中2になって、進路を考える時期に差し掛かった時に、

学校の先生や保護者から将来はどうしたいの?と尋ねら

れました。I君は尋ねるということは、特別支援学校の

高等部以外の選択肢があるのか?と思ったようです。

 

その時に、小学校の時から知的クラスに在籍していた

クラスメイトとこれからもずっと一緒でいるのか?

一緒にサッカーをしている同級生の仲間が通うような

学校に進むのかということを考えたというのです。

 

チャンスがあるなら違った生き方をしてみたい。

 

支援学校に行けば今までと何も変わらない。

友達もそのまま。勉強もきっと変わらない。

何も変わらない時間を、ただ過ごすだけなんじゃないかと。

そんな時、行ってみたい学校が見つかったというのです。

建築コースというのがある通信制・サポート校でした。

お父さんが建築関係なので、勉強や卒業した後の仕事の

こともイメージがしやすかったようです。

 

早速その学校に見学にいったところ、学力面で今の能力が

わかるような目安になるような成績表などがないので評価

のしようがなく、今の段階で受験しても合格できそうか

どうかわからない、と言われてしまったというのです。

 

そこで学びのいろはのことを聞きつけ、塾に通うことに

したというのです。

 

 

体験で受け入れたときに、非常にまじめだったことと

小学校までの内容がきちんと学習されているので、これなら

間に合うかもしれないと判断しました。

 

 

後で伺うと、これまでも塾にはずっと通っていたといいます。

ただ、そこの塾は中学校の内容は高校入試の対策をやってくれ

ないということだったようです。

 

 

9月に実施された学調を受けたようで、こちらの結果を

拝見したところ、第一志望の通信制・サポート校は併願で

受験をしても合格すると判断しました。

 

そこで、大平台高校定時制という学校があるから、挑戦して

みてはどうか?、と提案しました。

2学期の三者面談で学校の先生に大平台高校定時制の話を

したようです。その時の学校の先生の反応は

「え? 大平台?」、と二度聞きされるほど驚かれたと

いいます。それだけでなく、私がI君のお母さんに伝えた

内容とまったく違うことを言われました。

 

「知的クラスから大平台高校なんて絶対に無理。その前に、

建築科のある通信制・サポート校も受かることだって難しい」

 

I君もお母さんも、どちらを信じていいか不安になって

しまいました。

 

 

 

ともかく大平台高校定時制がどういうところか?学校見学

があるというので行ってみてから考え直すということに

なりました。

 

大平台高校はきれいで大きな学校でした。

いろいろな教科の教室もありました。たくさんの授業の

中から好きな教科を選べ、少人数で受けれる授業もありました。

 

それとサッカー部がありました。もし大平台高校に入れたら、

サッカーを続けられそうだとI君は思ったようです。

 

 

 

進路未定のまま、2学期は過ぎていきました。

その間、数学と理科に絞って受験対策に取り組みました。

 

数学に関しては、文字式・方程式などを一気に取り組み

連立方程式や一次関数はざっくり省き、展開・因数分解

まで一気に進みました。

 

これまで教えてきた知的障がいを持った生徒の場合、

教えたときにはできても、新たな単元に入ると、前の

ことを忘れ、忘れるだけでなく、混乱して、できていた

ことも分からなくなるという傾向があったのですが、

そういった混乱が見られず、きちんとそれぞれの単元を

理解習得することができていました。

 

理解についても漢字がきちんと読み書きできていました

ので分からない問題があったとしても教科書を開き、

自分で調べることができました。単なる丸暗記ではなく

一つ一つ理解をしながら学習をすることができて

いました。

 

 

 

冬休みは冬期講習を予定していました。大みそか

元旦以外は毎日授業があります。ところ塾までは

家から一時間ほどかかります。毎日お母さんが送迎

することはできませんでした。

 

行くなら自分で電車に乗っていかなければなりません。

でも、今までひとりで電車に乗ったことがなかったと

いいます。それどころか自分の家で一人で留守番をする

ことができなかったといいます。

 

でも専門学校でも大平台高校でも合格したら、

あと数か月後にはどちらかの学校へ電車に乗って通学

しなければなりません。電車に乗る練習をし、冬期講習

にのぞみました。

 

あとになってI君は

一日がこんなに長いと思った時はないと思ったそうです。

一生でこんなに勉強するのは今だけだから、と言った

私の言葉を覚えていました。

 

ともかく、風邪をひくことなく、最後まで頑張ることが

できました。

3学期になりました。

 

2学期末に決めるはずだった受験先をまだ決めずに

3学期に持ち越していました。通信制・サポート校を

併願受験するだけの確信をI君自身が持てていなかった

からです。

 

でも、お母さんは決めていました。併願で受験し、

大平台高校定時制にチャレンジすることを。

冬休み大変な思いをして塾に通い、勉強することができた。

その姿を見て絶対にうまくいく、という風に思ったそうです。

 

結局、通信制・サポート校を併願受験しました。

会場には数人しかいなかったようです。

十日ほど経ってから結果が出ました。合格でした。

 

 

そしていよいよ大平台高校の受験の日。

通信制の学校とは違い、会場にはたくさんの人が

いました。180人合格の定員のところに190人

以上が受けていました。十人以上は落ちてしまう。

 

テストも難しく、面接を含め、試験は2日にわたり

非常に長く感じたようです。

 

 

いよいよ合格発表の日となりました。夕方くらいに

結果の連絡があると思っていましたが、お昼を過ぎて

しばらくしたころに、来客がありました。

I君とお母さんでした。表情で分かりました。

合格でした。

 

 

 

追記:2019年5月

 

  

高校生になりました。毎日、一時間かけて電車通学。

字を書くのが苦手ですが、プリントや問題集を中心

に授業が進むので安心したと言っていました。

サッカー部に入り、全国大会を目指して頑張っている

ということでした。